シワと一口に申しましても、その性質・正確は実に幅広いものです。最初に言っておきますが、本来まったくシワの生じない顔など、人間の自然な表情としてはありえないわけです。笑いジワ、怒りジワ、などなど、人の喜怒哀楽に合わせて様々なシワが出来るのは、これは表情筋が活発に動いて様々な感情を表にあらわしてくれるのです。また、こうした表情がいきいきとあらわれることで、その人の活力と若さがかえってアピールされ、人間的魅力をも引き出してくれる重要な現象、それがシワなのです。
ただ、こうしたお顔のシワも若いうちならお肌の弾力性によってすぐ復元し、もとのつるつるぴかぴかのフェイスに戻ってくれるのですが、年齢と共に肌の弾力が失われてくると、深い爪あとのようにシワが残ってしまいます。これが一般に、世に言うところの「シワ」ということになります。それでも、いつも嫣然と微笑んでいる人のお顔に刻まれた穏やかな笑いジワなど、かえってその人の美しい人生の象徴として、なかなか魅力を増してくれるものだと筆者などは考えます。
問題になるのは同じシワでも、怒りジワや泣きジワ、不平不満を刻みつけたような陰険なシワの数々。単に年齢を表すだけでなく、頑固そうに見えたり、陰気な暗い性格に見えたり、あるいは見るからに悪人じみた冷酷な性格に見えたり、対人関係の上でもこうした醜いシワは実に困ったものです。たとえ本当は事実と違っても、その人がまるで良くない人生を送って来たのではないかという、不当な評価まで下されてしまうのが顔のシワなのです。
シワは顔でも手相でも、昔からその人の半生を占い、そこから性格を占い、さらに来たるべき未来を予測するデータとして重視されてきました。手相の場合、手に生じたシワで、どのような仕事をしてきたかがおおよそうかがえるからですし、顔のシワの場合、どのような表情を形作って来たかの証ともなるわけですから、その人の生活態度、対人関係、人生哲学、性格について読み取ることが可能だ、と昔の人は考えたわけです。膨大なデータを基に判断するわけですから、あながち間違いとは言えないまでも、時にはかなり的外れで迷惑な風評被害も生むわけです。
よく四十過ぎたら男は自分の顔に責任を持て、と言われますが、これもまた顔のシワが物語る人の生き様がテーマになっているわけです。それほどシワというのは、その人の印象にとって重要な意味を持つわけですから、単に若さを保つ、美しさを保つという以上に、もっともっと顔のシワについては真剣に認識する必要があるかもしれませんね。